軍需専門商社から繰り返しゴルフ接待を受けていた守屋武昌前防衛省事務次官が収賄容疑で逮捕されました。北海道や九州へのゴルフ旅行をはじめ、総額1500万円以上、300回を超えるゴルフ接待を受けていたというもの。公務員である前次官だけでなく、その妻までが「身分なき共犯」として逮捕されたのです。このため、参議院での証人喚問が難しくなり、国会での真相究明は遠のいていくようですが、防衛族議員への追及は絶対にゆるめるわけにはいきません。
この10年間で防衛利権をめぐる政官癒着の事件は、すでに5件にのぼりました。いずれも2兆円と言われている軍用機から制服にいたるまで、装備品調達に関する業者との問題です。軍事機密の名の下に、7割を超える随意契約がその癒着の温床になっているのです。いずれの事件でも国民の信頼を取り戻すことを言明してきても、何の効力も発揮していません。口先だけの謝罪ばかりです。倫理規程を作っても、そのトップが知らんぷり。「2兆円の買い物を毎年正しい値段で買い、納入までチェックするのは難しい」と防衛省自身が嘆いているのでは、族議員たちからの圧力を跳ね返す力など防衛省には生まれません。国民よりも族議員に目が向く官僚政治の典型です。
今回は商社の内部分裂によってその実態が明るみに出たもので、もっと大きな利権を持つ商社はいまだヤミの中。分裂がなければ、防衛省トップの犯罪は究明されなかったはず。政治家との深い関係を武器に、防衛省を牛耳ってきたこと、業者、官僚、政治家のトライアングルのキーポイントに守屋前次官が存在していたことは、日本の安全保障政策の根幹を揺るがすものです。どのミサイルが良いとか、どの戦闘機にしようかなどと言う前に、その選定者の資質を調査することが必要です。この責任は自公政権にあることははっきりしています。
守屋前次官を任命したのは小泉純一郎元首相であり、当時の防衛庁長官は現在の石破防衛大臣です。改革を叫びながら、官僚政治の改革には手をつけず、族議員政治の改革はカヤの外でした。このツケが今日の事態を招いてしまったのです。毎週の接待ゴルフを知ることができない防衛省の情報システムでした。防衛省の調達制度の構造的な問題にフタをして、族議員政治を許してきた責任は、ひとえに自公政権です。単なる役人と業者、政治家との癒着ではなく、事務次官や大臣という、No1、No2に疑惑の目を向けられてしまったことはまことに残念です。守屋夫妻の個人的犯罪に押し込むことではなく、族議員政治の利権構造をあぶり出すことです。
時代はさかのぼって、大正3年シーメンス事件と言われた海軍の監政本部であるその責任者、海軍中将がシーメンス社(ドイツ)から40万円の賄賂を受け取り逮捕されました。議会の追及は厳しく、加藤内閣は辞職に追い込まれました。山田洋行とシーメンス社の事件はまったく同じです。血税である税金の不正な使い方、官僚と業者の癒着は延々と続いているのです。防衛省の次官がこれでは、テロ特措法は別問題とする自公政権は大きな間違い。いまや政治家も視野に入れ、利権構造の解明が行われようとしています。
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