福田首相は、通常国会の施政方針で内閣府に消費者担当大臣を新設することを表明しました。
各省庁に窓口が分散している消費者行政を一元化することが目的。昨年から次々に発覚してきた食品偽装事件で、食の安全が問題になってきました。年金偽装のように泥沼に陥らないようにしたい福田首相の思いからの施策です。しかし、耐震偽装に始まり、食品、年金、政治資金など偽装問題が問われてきたのに、その抜本的対策が打ち出せない自公政権の焦りにも見えてくる方針にも見えてきます。
福田首相は「希望と安心の国づくり」を掲げ、生産者重視から消費者重視への政策転換に向けてきた時に次々に食品偽装が明るみになりました。
いまや、消費者重視の施策は各党も模索しており、このままでは次期総選挙で大敗北を喫してしまうことを恐れての消費者担当大臣の新設です。小泉偽装改革によって生まれた様々な格差やマイナス面を改善することなく、自民、公明による超安定政権にあぐらをかいてきたツケが先の参院選での与野党逆転でした。自民党も民主党と同じように「生活第一」と掲げることで、この敗北からのがれたくて政策を転換したのは明白です。
消費者重視への政策は、食品ばかりでなく、建築関連、労働環境の改善、家庭製品の安全対策など国民生活の様々な分野で求められています。耐震偽装では姉歯元一級建築士だけ、防衛利権では守屋前事務次官だけの個人犯罪にして幕引きをはかろうとしています。これでは抜本的解決への道はまったく見えません。今回の消費者担当大臣を新設しても、単なる担当大臣を儲けるだけで、一切問題解決にはなりません。まさに、消費者の立場に立った姿勢をアピールしたいだけ。このため消費者行政の一元化のための消費者庁の新設も議論があったのに、官僚たちの反対で頓挫。結局は何の権限もなく、スタッフも充実していない大臣が生まれそうです。
耐震偽装も、食品偽装も、年金偽装もすべてが官僚政治の弊害から生まれています。許認可権をもつ官が民をおさえているという根本に着手しなくて、消費者重視の政策など実現できるはずがありません。福田首相は、官僚政治打破の視点から消費者行政を考えるのではなく、官僚たちの立場から消費者行政を考えているだけ。抜本的解決を図るなら、各省庁に所管がまたがる縦割り行政を改革するとか、民主党のように食品表示Gメン創設など、官の機構改革をすすめなければ進歩はありません。権限縮小につながるため官僚たちは「一元化で問題は解決しない」など次々と抵抗してきており、この結論が単なる一人の担当大臣の新設で生活重視への政策転換と胸を張れる政策なのか、はなはだ疑問です。
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