国家公務員制度改革基本法案が自民、公明、民主が歩み寄り、議員立法での成立に動き出しました。渡辺行革担当大臣の「今国会で通すことに意味がある」という強いメッセージから、与党がこのままでは福田首相の人気は下がり続けることに危機感を持ったからです。公務員改革に逆行するイメージを避けるために民主党との修正協議をはかったもの。また民主党も不成立の責任論が起こることを恐れ、改革を一歩でも前進させるために譲り合ったものです。これで官僚政治の改革に進み出したのかというと不安もあります。これで一件落着とは残念であり、絶え間なく改革していくべきです。自民党特有の言葉の遊びから、国民の批判が強い「官僚政治の改革」を考えていたら、こんどは大変なことになるはずです。
今回の合意には、肝心の天下り禁止が盛り込まれておらず、それこそが改革の本丸です。民主党は政権交代を果たしてから実現するとして、法案では一切触れていません。官僚政治の根源である天下り問題に目をつぶっても、このまま改革法案を通さなければお役人だけが喜んでしまうでしょうから、まず与野党合意が生まれました。また政治家と官僚の接触は族議員たちからの圧力ではないかと疑われてしまいますが、具体的なルールづくりもなく灰色です。国会議員と接触すれば記録を作成し、情報公開をするというだけで本筋とはまったく関係のない話です。これでは族議員たちのこれからの官僚と政治家の関係は提示できず、とりあえずの改革ポーズです。そもそも官僚たちの天下りにメスを入れなければムダ遣いを許してきた族議員政治のしがらみ、温床を改革できるはずがありません。行政は複雑怪奇なり。官僚しか理解できません。
幹部人事を決めるのは、内閣人事局を設け、官房長官が人事案を作成することになりそう。その官房長官は政府の一員であることが問題です。各省庁が原案を作成するという政府案に比べ、一定の前進ですが、そもそも各省庁が作成するという発想自体が官僚政治そのものであり、改革の意識はみじんも感じられません。本当に各省庁が幹部人事に口を出させない仕組みになれるのかは不透明です。キャリア制度の廃止で、各省庁だけが独自にキャリアを育てていく仕組みは変更されます。しかし、本来の官僚機構の制度設計を示さなければこれまた例によって官僚のペースに乗せられてしまいます。本質的な議論もなく、国会はあまりにも目先の議論だけが飛び交っているようです。
自民党も、公明党も、民主党も今回の基本法案の成立で官僚政治の改革に不熱心なイメージだけは避けられました。不成立になった時の福田首相のダメージも緩和されました。しかし、国民には談合政治のように見られています。内閣人事局の創設、天下り問題、政治家と官僚との関係など公務員改革の議論をすすめている中での合意でなく、ある日突然の合意だったからです。当面はカンタンな改革だけを行えば良いという単純な発想から与野党が歩み寄っただけ。本格的な議論もなく公務員改革の本筋が見えない、まるで与野党談合のように疑われてしまった国家公務員制度改革基本法案です。これは政治にとって永久のテーマだと確信しています。
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